2018年11月6日火曜日

意外に大きい、「まとめて」する効果

 前回に続き、今回も、調理プロセスの見直しです。今回は、野菜について見てみましょう。野菜の調理のプロセスは、概ね、以下の7つのプロセスからできています。


 レシピを考える
   ↓
   ↓
 買い出し
   ↓
   ↓
  洗い
   ↓
   ↓
 切り刻み
   ↓
   ↓
 必要に応じて、下味付け
   ↓
   ↓
  調理
   ↓
   ↓
  後片付け

「洗い」のプロセスが加わり、「切り刻み」のプロセスが「下味付け」の前に来ているところが、「肉・魚」のプロセスと異なる点です。はい、では前回同様、このプロセスを、調理の時短と食材廃棄ロス削減の2つのことを念頭に組み替えてみましょう。こうなります。


 まとめて買い出し
   ↓
   ↓
  まとめ洗い
   ↓
   ↓
 まとめて切り刻み
   ↓
   ↓
 冷蔵庫の中で味付けしながら保存
   ↓
   ↓
冷蔵庫にあるものでレシピを考える
   ↓
   ↓
  調理
   ↓
   ↓
  後片付け


 どうですか。どこが、どう変わったか、わかりますか? プロセスの数は増えていません。しかし、ここでも、順番は大きく変わりました。

毎日、夕飯の献立を考えるという”重荷”からの解放

「肉・魚」と「野菜」。2つの新・調理プロセスが出揃ったところで、どこがどう、調理の時短と食材廃棄ロス削減に関わっているのか、具体的に見てみましょう。ポイントは、①何かを「まとめて」する②冷蔵庫の中で保存する③冷蔵庫にあるものでレシピを考える、の3点にあります。今回は、まず、「調理の時短」の観点から。
 あなたは、夕飯の献立、いつどこで考えますか? 昼休み、3時のティー・タイム。それとも、帰りの電車の中ですか? いずれにせよ、その「今日の夕飯の献立、何にしようかなあ?」と考えることに費やす時間は、月曜から金曜まで、毎日のことですから、足し算したら、結構、バカになりませんよね。昼に食べたものとの兼ね合いを考えたり、冷蔵庫の中のものを思い浮かべてみたり。それと、今日の食欲の都合などもあるし。
 で、「よし、今日は、これで行こう!」と決めて、途中下車して、スーパーの生鮮品売り場に立ち寄ったら、肝心の魚が売り切れ。こうなったら、せっかく、すき間時間を利用して考えた献立もパーですよね。まさに徒労。どっと、疲れが出ます。まあ、毎日、こんな不運はないと思いますが、献立を律儀に(?)に毎日、考えて、買い出しも毎日、となったら、調理場に立つまでに、大変な時間が取られるわけです。まあ、「スーパーの生鮮品売り場を見て回ってから、その日の献立を考える」というレベルの人なら、話は別ですがね。
 その労を軽減するための工夫として、まず考えられるのが、週末に、翌週一週間分の献立を考え(場合によっては、壁のカレンダーに書き込んだり、冷蔵庫に貼り付けたり)、それに合わせて、ある程度の買い出しを、「まとめて」しておくという方法です。これなら、勤め帰りの買い出しも、足らないものを補う程度の、最小限で済みます。しかし、この方法は、料理のレパートリーがさほど多くない人にとっては、ハードルが高いのに加え、献立の、中途での変更がやや難しいという難点があります。つまり、調理の上級者向きなのです。
 そこで行き着いたのが、使う頻度の高い食材の買い出しを週末にまとめて行い、それを冷蔵&冷凍ストックしておいて、あとは、日々、帰宅して、冷蔵庫の中を見回してみてから、その日の献立を考えるという方法です。これだと、基本、勤め帰りの買い出しは必要なくなるし、月曜から金曜までの毎日、会社や電車の中で、夜の献立に思いを巡らす必要からも解放されます。これなら、料理のレパートリーがさほど多くない人でも、回していけるでしょう。
「まとめて」買い出しをし、それを冷蔵&冷凍ストックすることによる、調理の時短効果は、野菜のほうにおいて、より顕著に現れます。野菜は通常、買ってきてから、洗って、切り刻み、それから調理に供するという流れになりますが、「まとめて」買い出し、それを「まとめて」冷蔵&冷凍ストックすることによって、この間に発生する手間(ボールとまな板と包丁を出して、野菜を洗って、切り刻んで、使った調理器具を洗って、また元に戻す、という一連の手間)が、一度で済みます。もっとも、肉・魚も、まな板と包丁を出して、肉・魚を切って、汚れたまな板と包丁を洗って、また元に戻す、という一連の手間が一回で済むというのは同じなので、調理の時短という面で、こちらも、効果は大きいと言えます。(⇒次回に続く)



2018年11月4日日曜日

調理のプロセスを見直し、組み替える

 食べるものは可能なかぎり自分で作る、つまり、自炊派の人々の、昨今の一番の悩みは、一日のライフサイクルの中で、買い出しや後片付けも含めた、クッキングに費やしている時間をどうしたら短くできるか、ということではないでしょうか。しかも、できれば、出来上がった料理のクオリティは落とすことなしに。
 その実現は、これまで当たり前と思っていた、従来の、調理のプロセスを少しばかり組み替えることで、かなりの程度、可能です。しかも、その組み替えは、もう一つ、後ろに隠れた問題である、冷蔵庫内の「食材廃棄ロス」の削減にもつながるとあれば、トライしてみる価値あり、ですよね。
 皆さんの周りには、なぜかわからないけど、食卓を整えるのが神業的に速い人、いませんか? 素質や才能の問題? いえ、違います。短い時間で、食卓に料理を用意できるのは、日ごろからの心がけ。具体的に言えば、「どこかにムダはないか…」と、絶えず頭の中で、調理のプロセスの見直し・組み替えを行ってきた、その積み重ねによるものなのです。換言すれば、食卓を整えるのが速い人というのは、イコール、頭の中で調理のプロセスの見直し・組み替えが自然にできる人なのです。
 そのノウハウを”盗む”ためには、調理のプロセスを一度、紙に書き出してみることが必要です。しかも、「今日は何を食べようか」とレシピを考えるところから、食べ終わって、後片付けをするところまで、範囲を広げて、考えてみることがミソ。
 プロセスは、肉・魚といった主材と、野菜などの副材では、若干、異なりますので、今回は、「肉・魚」について見てみましょう。「肉・魚」の調理のプロセスは、概ね、6つのプロセスからできています。


 レシピを考える
   ↓
   ↓
 買い出し
   ↓
   ↓
 必要に応じて、下味付け
   ↓
   ↓
 切り分ける
   ↓
   ↓
   調理
   ↓
   ↓
  後片付け


 この中の、いったい、どのプロセスに、時短と食材廃棄ロス削減のネタが潜んでいるのか。着眼点は、人それぞれだと思いますが、当クッキング・サイエンス研究所は、以下のように、一連のプロセスを組み替えることで、調理の時短と食材廃棄ロス削減は、かなりの程度、実現可能だと考えています。


 まとめて買い出し
   ↓
   ↓
 必要に応じて、切り分ける
   ↓
   ↓
 冷蔵庫の中で味付けしながら保存
   ↓
   ↓
 冷蔵庫の中にあるものでレシピを考える
   ↓
   ↓
   調理
   ↓
   ↓
  後片付け


 どこが、どう変わったか、わかりますか? プロセスの数は増えていません。しかし、順番は大きく変わりました。ある意味、これまでの調理の常識を覆す(?)ものですが、じつは、これ、料理研究家をはじめ、予約が取れない、伝説の家政婦さん、さらには、食卓を整えるのが神業的に速いスーパー主婦の間では、今や、当たり前のように実践されていることなのです。(⇒次回に続く



2018年10月28日日曜日

自炊による食費削減効果は、まだ道半ば?

 ひと月の支出のムダを省こうと思った場合に、誰でも、まず着目するのが食費でしょう。ひと月の支出割合を見た場合、家賃(住宅ローン)に続いて多いのが、食費(調理食品、外食、素材となる食料の購入の合計)だからです。
 ややデータは古くなりますが、総務省が実施している「全国消費実態調査」によれば、単身30歳未満世帯の食費は、1999~2014年の5年間で22.6%も減っています。特に男性が顕著で、24%も減っています。「調理食品の普及等による食の簡便化や、料理をしてみたいという意識が進み、自宅で食事をとるようになっていることの表れ」と総務省はみていますが、この間、外食が29.4%も減っていることを考えれば、食費削減効果の大半は、外食の抑制によるもので、自炊による削減効果はまだ、さほど出ていないというのが実態のようです。つまり、食費を削るために自炊を始めてはいるものの、肝心の調理力が伴っていないため、逆に冷蔵庫の中の食材ロスが増えたりして、トータルでは、あまり節約につながっていないのです。
「じゃ、早く、料理教室にでも通って、調理力をつければ、いいじゃない」とおっしゃるかもしれませんが、巷の料理教室では、本当の意味での調理力は、なかなかつきません。どういうことかと言うと、料理教室は、あくまでも、受講者が料理のレパートリーを広げて、料理を楽しむというのが、その主眼であって、調理力は自宅のキッチンで日々、磨くものというスタンスだからです。つまり、いい意味でも悪い意味でも、料理教室は、カルチャーセンターの乗りなのです。
 既存の教育機関で言えば、プロの料理人を育てるのが目的の、調理師専門学校の門を叩けば、一番、間違いないのですが、勤めを持っている社会人が通うというのは、現実的ではありません。また、単に、家の食事を、手際よく、ロスなく作れるようになるのに、そこまでの調理力は必要ないかと。
 第1回の冒頭で、「日本人の調理力が危機に瀕している」と言いましたが、そこで言っている調理力とは、何も、プロの料理人にも引けをとらないような調理力のことを言っているのではなく、ご飯がちゃんと研げて・炊ける、ダシも苦もなく取れる、味噌汁や浅漬け程度なら簡単に作れる、といった、極めてベーシックなスキルのことを指しているのです。ただし、忙しい現代人は、それだけでは、十分とは言えません。短時間に、食材ロスを出すことなく、それらのことを実現させることが、今、新たに求められているのです。(⇒次回に続く



2018年10月27日土曜日

稼いでも、そのおカネは気楽に使えない、今の若者たち

「稼ぐが勝ち」。これは、ある意味、今の日本社会の一面の真理ですが、こうした親御さんの思惑とは裏腹に、日本では今、若い人たちが、稼いでも、そのおカネは気楽に使えない状況が出現しています。日本の公的年金制度の持続可能性が不安視される一方、日本の経済的地位が急速に低下しているため(その責任の大半は、安倍政権の無策)、若い人たちが、日本の先行きに明るい展望を持てないでいるのです。
 日本の公的年金制度の持続可能性に関しては、「(支給額を)減額されることはあっても、制度がなくなることまでは・・・」といった楽観論もありますが、当の若い人たちは、その言をまったく信用していません。ある就職情報会社が、2年前に大学生を対象に実施したアンケート調査によれば、「将来、年金がもらえると思っていない」と考えている人は、なんと、約7割も占めました。「年金がもらえると思っていない」以上、いくら稼いでも、そのおカネを気楽に使う気分にはなれませんよね。
 自分たちの責任を問われかねないので、日本政府はひた隠しにしていますが、日本の今の一人当たりの国民所得(GDP)は、世界で何位だと思いますか? 10位? ブー。じゃ、15位? それもブーです。信じられないかもしれませんが、2016年現在で、日本の一人当たりGDPは、世界22位です! 2010年は、まだ、18位に踏みとどまっていたのですが、安倍政権6年の間にドイツやイギリスにも抜かれてしまいました(そんな国が何で先進7か国に入っているのか不思議ですよね)。
 2000年までは、日本は1人当たりGDPが米国を上回る水準で、小国を除くと、実質的には世界第1位だったことを思うと、隔世の観がありますよね。1人当たりGDPが、名目GDPによる表示であることから、低いインフレ率の日本が数字上、不利になるという指摘は認めます。しかし、そもそも、経済成長率が低いことに、この相対的地位低下の根本的な理由があるわけですから、若い人たちに、「日本の先行きに明るい展望を持て!」と言うほうが無理だと思いませんか?
「節約するが勝ち」。今の若い人たちの生活信条を一言で言い表せば、こんな表現になるでしょうか。残念ですが、安倍総理の言うことなんか、だれも、信用してない。口から出任せだと思っている。来るべき公的年金制度の破綻を見据えて(?)、稼いだおカネを、いかにして、減らさないようにするか。若者たちの関心は、その一点に移ってきていると言っても過言ではないでしょう。団塊の世代の人たちに比べると、随分、堅実…。確かに、そうですよね。でも、それが、今という時代なのです。(⇒次回に続く



2018年10月24日水曜日

日本人の調理力が危機に瀕している!

 某男性ファッション誌のキャッチコピー風に言えば、「必要なのは、おカネじゃなくて、調理力です!」。
 何に必要なのかって? 決まってるでしょ、この八方塞がりの日本国で、これから生き残るため、サバイバルするためです。人間、生きていくためには、衣・食・住が不可欠なことは、言を待たないと思いますが、中でも食は、基本中の基本。その食を食たらしめる、日本人の調理力が危機に瀕していること、皆さん、ご存知ですか?
 味噌汁が作れない、浅漬けが作れないというのなら、まだしも、ご飯が研げない・炊けない、ダシが取れない、包丁で野菜が切れない、リンゴやナシの皮が剝けない・・・。どうします、こんなんで。
 いえ、家事万端、奥さんにお任せの現役社畜の皆さん(失礼!)や、既にリタイアして、奥さんに粗大ゴミ扱いされている、かつての社畜の人たちのことを言ってるのではありません。まだ、これから、60年も70年も生きなければならない若い人たちがそうなので、心配しているのです。特に、男性。嘘だと思うなら、お嬢さんや息子さんが、休みの日、家でゴロゴロしているタイミングを見計らって、やらせてみるといいと思います。かつての社畜もびっくり(?)の状態だと思いますよ。包丁を使うときなんか、危なっかしくて、とても見てられませんから。きっと、「自分の若い時のほうがマシ」と思えてくるでしょう(トホホホ・・・)。
 いったい、なんで、こんな悲惨な状況になったんでしょうか? そう、それは、小学校に上がってから高校を卒業するまでの約12年間、調理をする機会が、極端に減ってしまったからです。学校では、家庭科の授業時間数が、この40年間で、小学校が18%、中学校が64%、高校が50%もそれぞれ削られ、家でも、「受験に差し障りがあるといけない」というんで、男女関係なく、子供には、できるだけ調理をさせないようになってきている。「調理なんかしてる時間があったら、勉強しなさい! 調理なんかできなくったって、いい大学、いい会社に入って、ガンガンおカネを稼げば、ちゃんと生きていけるんだから」。大抵の親は、こう考えているんじゃないでしょうか? 
 これは、何も、調理に限ったことではありませんが、場数が物をいう、こうした家事の類は、訓練する機会が減れば、力はけっして養われません。特に、10代は好奇心旺盛で、スキルを吸収するのに、うってつけの時期。その時期に訓練できないんですから、あまりに、もったいない。(⇒次回に続く